淋菌感染症(淋病)とは
淋病は淋菌の感染によって発症する性感染症で、正式名称は淋菌感染症といいます。
感染者との1度の性行為で感染するほどの強い感染力を持っており、感染が拡大しやすいという特徴があります。
また、淋病は性器だけでなく喉にも感染します。
自覚症状がみられない場合も多いことから、気づかないうちに感染が拡大しているというケースも少なくありません。
そのため、少しでも心当たりがある場合は早期検診または定期健診を受けることが重要です。
淋菌感染症の症状について
では、淋病ではどのような症状がみられるのでしょうか。
ここからは、男女別でみられる症状をご紹介します。
男性の場合
淋病における男性の症状は以下のようになっています。
性器へ現れる症状
- 排尿時の痛み
- 尿道の痒みや違和感
- 尿道から黄白色で粘りのある膿が出る
- 副睾丸の腫れ
男性の場合は自覚症状が現れやすい一方で、性器の腫れによって歩行困難になるほどの激しい痛みを伴うケースあります。
喉に現れる症状
- 喉の痛みや腫れ、違和感
- 頸部リンパ節の腫れ
- 発熱
- 咳
- 声のかすれ
女性の場合
淋病における女性の症状は以下のようになっています。
性器へ現れる症状
- おりものの増加
- 濃い緑黄色のおりものが出る
- おりものの悪臭
- 下腹部の痛み
- 不正出血
- 排尿時の痛み
- 頻尿
- 外陰部の痒みや腫れ
男性と比較すると女性は症状が現れることが少なく、パートナーの感染によって初めて気づくケースが多いです。
そのため、淋病の感染に気づかないまま複数のパートナーと性行為をし、感染が拡大してしまうリスクもあります。
喉へ現れる症状
- 喉の痛みや腫れ、違和感
- 頸部リンパ節の腫れ
- 発熱
- 咳
- 声のかすれ
男女どちらも喉に症状が現れにくく、現れた場合でも風邪だと勘違いして感染を拡大させてしまうケースも少なくありません。
淋菌の潜伏期間について
淋菌の潜伏期間は2〜7日です。
ただし潜伏期間には個人差があるため、この期間中に症状が現れないからといって必ずしも感染していないとはいえません。
実際に尿道に淋菌が感染した方のうち約50%、喉の感染においては約90%の方が無症状です。
特に女性の場合は症状が現れないことが多いため、淋病に感染していることに気づけない場合が多いです。
そのため、感染に気づかず、潜伏期間中に他人に感染させてしまう可能性があるため注意が必要です。
淋菌の感染経路とは
淋病は、主に性行為によって感染します。
淋菌は本来とても弱い菌であり、粘膜以外で生存することはできません。
そのため、感染経路は限られており、淋菌の感染部位との粘膜接触や陰部の分泌物の接触によって感染します。
男性の場合は尿道、女性の場合は子宮頚管が主な感染部位です。
淋菌の原因が分からない場合の感染経路は?
淋病の原因が分からない場合の感染経路として考えられるのは、出産による母子感染やタオル・浴室の床からの感染です。
母子感染のほとんどは分娩時の産道感染によって起こります。
新生児に感染した場合は化膿性結膜炎や関節炎などをはじめ、命に関わります。
そのため、妊娠中に淋病の感染が認められた場合は出産前に治療・完治することが重要です。
また、身近に感染者がいる場合は感染者が使用したタオルの共有や浴室の床からの感染が起こるリスクがあります。
淋菌は自然治癒する?
淋病は基本的に自然治癒することはありません。
たとえ症状がみられなくなったとしても病原体が体内に残ったままのため、治療をしなければ進行していきます。
淋病を治療せずに放っておくと、パートナーに移したり症状が再発したりする可能性があります。
淋菌が原因となる疾患とは
また、淋病は様々な病気を誘発する原因にもなります。
女性の場合
注意すべき病気は、淋病性子宮頚管炎です。
おりものの悪臭や発熱、排尿痛・性交痛などの症状が現れ、進行すると卵管炎や卵巣炎を発症する可能性があります。
卵管炎や卵巣炎は不妊症を引き起こす原因にもなります。
男性の場合
精巣の上部にある精巣体に炎症が起こる精巣上体炎を発症する危険性があります。
精巣上体炎を発症すると、陰嚢(いんのう)の痛みや腫れ、発熱などが現れます。
精管にまで炎症が広がると太ももの付け根や下腹部に痛みが生じ、歩行困難になる場合もあります。
さらに、精巣上体炎を放置すると尿道が狭くなる尿道狭窄(きょうさく)症を引き起こし、男性不妊に繋がってしまいます。
このように淋病は様々な病気の原因になることから、早期発見・早期治療が非常に重要です。
淋病の治療について
では、淋病の治療法はどのようなものなのでしょうか。
ここからは、淋病の治療についてご紹介します。
治療法
淋病の治療法には飲み薬・点滴・筋肉注射の3種類があり、症状や合併症などに応じて医師が判断します。
飲み薬には、セフトリアキソンとスペクチノマイシンという抗生物質が用いられます。
一方で、これらの抗生物質に耐性を持つスーパー淋菌もあります。
そのため、抗生物質を服用しても淋病が治らない場合は耐性菌の感染が疑われます。
しかし、スーパー淋菌は全ての抗生物質に耐性を持っているわけではありません。
スーパー淋菌の感染が疑われた場合は他の抗生物質、もしくは点滴、筋肉注射による治療が可能です。
治療期間
淋病の治療期間は症状や合併症によって異なりますが、内服治療の場合は1週間前後、点滴や筋肉注射の場合は1~2回が目安です。
スーパー淋菌に感染や合併症がみられる場合は、複数回の治療が必要になります。
淋病の予防法について
淋病における1番の予防法はコンドームを着用することです。
オーラルセックスやアナルセックスを行う際もコンドームを着用することで、性器以外の感染を防ぐことができます。
また、淋病は適切な治療を行えば完治するものの、免疫の獲得ができないことから再感染しやすい病気です。
そのため、1度感染した場合は再検査を忘れずに行い、完治しているかを確認する必要があります。
再検査は最低でも治療後1週間は空け、その間は性行為はもとよりタオルの共有やキスなど感染のリスクが高まる行動は控えましょう。
淋病の検査について
男性の場合は泌尿器科、女性の場合は婦人科、咽頭感染の場合は耳鼻咽頭科。
性感染の場合は患部から体液を接種、もしくは採尿し淋菌の有無を調べます。
当院では結果判定までに7日程度の時間を要します。
治癒完了後の確認検査について
淋病は治療して終了ではなく、治癒確認検査を行う必要があります。
治療後約1~2週間経過してから再度検査を行い、完治しているか否かを確認します。
パートナーが感染しているのにも関わらず一緒に治療を受けないでいると、再検査時に陽性反応が出るケースもあります。
また、抗生物質に耐性を持つ淋菌に感染している場合も同様です。
そのため、治療が終了した後に再検査を受け、完治しているか否かを確認することが重要になります。
淋菌とクラミジアの違いとは
淋病とクラミジアは同じ性感染症であるものの、症状に違いがあります。
ここからは、男女別で淋菌とクラミジアの違いについて解説していきます。
男性の場合
淋病では、黄白色で粘りのある膿がみられるとお伝えしました。
一方で、クラミジアは透明でサラサラした膿または乳白色の膿がみられるのが特徴です。
また、淋病はクラミジアよりも排尿時の痛みが強く出る場合があります。
女性の場合
淋病では、おりものの増加や色の変化、臭いが強くなるなどがあげられます。
一方で、クラミジアはおりものが増加するものの、臭いの変化はほとんどありません。
しかし、いずれも無症状の場合があり個人差も大きいため、症状だけでは判断が困難です。
少しでも疑問を持ったら病院で診断してもらうようにしましょう。
まとめ:淋菌について
今回は、淋病についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 淋病は淋菌による性感染症の1つで、主に性行為から感染する
- 淋病を発症すると性器や喉などに様々な症状がみられるが、無症状のケースも多い
- 淋病は抗生物質や点滴、筋肉注射などの治療で完治するが、治療後に再検査を行って完治しているか否かを確かめることが重要
- 淋病における1番の予防法はコンドームの着用
これらの情報が皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。