前立腺がんとは?症状や原因、治療法、診療費用について詳しく解説

前立腺のはたらきと前立腺がん

前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の真下にあり、尿道を取り囲むように位置しています。クルミほどの形と大きさで、中心部にある内腺と、辺縁部の外腺に分けられます。精液の一部である前立腺液を作り、精子の運動機能を助けるはたらきをしています。

 

~前立腺の解剖図~

前立腺解剖図1

前立腺解剖図2前立腺にできるがんを前立腺がんといい、50~70代の中高年男性に多くみられます

一般的には前立腺がんの進行は緩やかであると言われていますが、一部では急激に進行する場合もあります。
がんは尿道から離れた辺縁の外腺にできることが多いため、排尿の症状が出にくく、初期ではほとんど症状がありません。

しかし、がんが進行し、尿道を圧迫すると排尿障害などを起こします。

また、骨へ転移をきたした場合は「腰が痛い」などの症状が現れます。

症状と原因

1.症状

自覚症状

・排尿障害:排尿困難、頻尿、尿失禁、残尿感など

・排尿時の痛み

・尿や精液に血が混じる

・尿閉(尿が出なくなる)     など

転移後の症状

・背中や腰の痛み

・足のしびれ

・足や陰嚢、下腹部のむくみ    など

2.原因

加齢

決定的な原因は明らかになっていませんが、加齢に伴い発症する可能性が高くなることがわかっています。
前立腺の成長に関わる男性ホルモンのバランスの崩れが、がんの発症と進行に関係すると考えられています。

家族歴

家族内に前立腺がんを発症された人がいる場合、前立腺がんにかかるリスクは2倍~5倍程度に及ぶと報告されています。

食生活

食生活と前立腺がんとの因果関係は明らかになっていませんが、一説では、肉類や乳製品などの動物性脂肪の摂りすぎは発症リスクを高めると言われています。

診断・検査

直腸診

肛門から直腸に指を入れ、直腸の壁越しに前立腺を触診します。
前立腺の大きさ、しこりの有無、表面の弾力性を確認します。

正常な前立腺は弾力があり、がんが進行していると石のように硬くなります。

超音波(エコー)検査

超音波を用い、前立腺の大きさの測定・形状などを確認します。

PSA(血液)検査

前立腺がんを早期発見するのに有用な血液検査です。
PSA値が高いほど前立腺がんの疑いが高くなります。

PSAとは、前立腺で特異的に作られるたんぱく質の一種で、健康な人の血液中にも存在します。

前立腺がんや前立腺肥大、炎症があると、血液中にPSAが大量に漏れ出します。

このためPSA値が高くなった場合は、前立腺に何らかの病気や傷があると考えられます。

~基準値~ ~4.0ng/ml

 

(年齢階層別基準値)

64歳以下 ~3.0ng/ml
65~69 歳 ~3.5ng/ml
70歳以上 ~4.0ng/ml

MRI検査

細胞の原子核と磁力との共鳴現象を利用し、体内の状態を画像化します。
前立腺がんの有無、部位、浸潤(かんの広がり)などを調べます。

この検査は、近隣の施設で受けていただくため、速やかに手配致します。画像検査の結果は当院でご説明致します。

前立腺(針)生検

精密検査の結果から、がんが疑われた場合には、前立腺針生検を行います。

前立腺の組織を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無やがんの性質などを調べる検査です。

肛門から超音波器具を挿入し、前立腺を観察しながら細い針を刺して組織(10ヵ所程度)を採取します。

 

~前立腺針生検(図)~

 

前立腺針生検(図)

 

~当院では日帰りの前立腺針生検を行っております~

 

病期診断

前立腺針生検でがんと診断された場合は、CT・骨シンチグラフィなどの画像診断(他院で撮影した結果を当院でご説明します。)を行い、前立腺がんの広がりや転移の有無を調べ、病期を診断します。
また、PSA値や前立腺針生検で得られたがんの悪性度なども参考にリスク分類をします。

病期やリスク分類に応じて、様々な治療法がありますが、治療による特徴や合併症もあります。

また、個々の年齢や生活スタイル、全身の状態なども考慮し、自身にあった治療法を選択することが大切です。

治療

監視療法

比較的おとなしく、がんが前立腺内にとどまっている場合の選択肢で、この療法には適用条件が定められています。
積極的な治療はせず、定期的な血液検査と生検を実施し、経過を観察する方法です。

手術療法

がんが前立腺にとどまっている早期がんに対しては「前立腺全摘除術」を行うことができます。前立腺と隣り合う精のうを含めすべて摘出し、尿道と膀胱をつなぎ合わせる手術です。術式は「開腹術」「腹腔鏡下手術」などがありますが、最近はより低侵襲で精密な手術が可能なロボットを用いた腹腔鏡手術(ロボット支援前立腺前立腺全摘除術)が急速に普及しています。

放射線療法

放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。

前立腺に限局した早期がんに対しては、手術同様の治療成績が期待できるとされています。
また、前立腺周囲に広がったがんに対しても、放射線療法に内分泌療法を加えることで、がんを根治できる可能性は高くなります。
放射線療法には体外から照射する「外照射療法」と放射線を出す小さな線源を前立腺内挿入する「組織内照射療法」があります。

(外照射療法)

1.3D-CRT(三次元原体照射)

三次元のCT画像で前立腺周囲の立体地図をつくり、最も効果的に当たる方向から照射する方法です。

2.IMRT(強度変調放射線治療)

複数の放射線ビームを組み合わせ、照射量に強弱をつけ、がん細胞に集中して照射する方法です。正常組織への線量を抑えることができ合併症の軽減が期待されます。

3.粒子線療法

水素原子を使った「陽子線治療」や炭素原子の原子核をビームに収束する「重粒子線治療」があります。前立腺がんに対する有効で副作用の少ない療法として注目されていますが、治療可能な施設が限られています。

(組織内照射療法)

1.密封小線源永久挿入治療

線源を永久的に前立腺に埋め込み、体内から放射線を照射する治療法です。放射線量は徐々に減り、1年後にはほぼ放射能の影響を気にする必要はなくなります。

2.高線量率組織内照射療法

外照射療法と内分泌療法を組み合わせることで、前立腺周囲に広がった局所進行がんや高悪性度の限局がんに対しても有効な治療法と言われています。

 

薬物療法

1.内分泌(ホルモン)療法

前立腺がんは男性ホルモン(テストステロン)の影響を受けて大きくなる性質があります。体内の男性ホルモンを低下させたり、その作用を抑制することでがんの増殖を抑える治療法です。

脳下垂体からの男性ホルモンの分泌指令を低下させる注射薬と、男性ホルモンの作用を阻害する内服薬(抗アンドロゲン薬)があります。

2.化学(抗がん剤)療法

前立腺がんの薬物療法の柱は内分泌(ホルモン)療法ですが、それまでの治療で効果が期待されなくなった場合は抗がん剤の治療が行われます。

 

まとめ

前立腺がんの治療は多岐にわたり、治療期間は長期にわたるため、患者さまに合った適切な治療を選択することが重要です
医師は、患者さまの全身状態、年齢、前立腺がんの病期などから治療を提案します。治療による効果だけではなく、治療に伴う合併症や有害事象、予後などについても説明します。

その上で、患者さまはご自身(ご家族)の生活や治療に対する希望を医療者へ伝えていただき、納得できる治療を選択して下さい。

当院では初診時から、検査、治療まで丁寧に説明し、患者さまの意思決定を全力でサポートします

また、手術・放射線治療・化学療法については、基幹病院で入院・通院中も安心して治療を継続していただけるように連携を図っております。