「健康診断でPSAが高いと言われたけれど前立腺がんなのだろうか。」
「最近尿が出にくくなった。前立腺がんではないかと心配。」
このような不安から泌尿器科を受診される方は少なくありません。

前立腺がんは男性に多いがんのうちのひとつですが、初期には自覚症状がほとんどないことも多く、健診の結果などをきっかけに発見されることがあります。今回は前立腺がんの症状や前立腺肥大症との違い、PSA検査とはどんな検査か、前立腺がんに係る詳しい検査や治療についてわかりやすくご紹介します。

前立腺とは

前立腺は男性だけにある器官で、膀胱のすぐ下にあり、その中央を尿道が通っています。若い成人男性では栗の実ほどの大きさで、精液の一部となる前立腺液をつくる働きがあります。また男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受ける器官でもあります。

~前立腺の解剖図~

前立腺がんとは

前立腺がんは、前立腺内で異常な細胞が増殖することで発生する悪性腫瘍です。比較的ゆっくり進行するものが多い一方で、なかには進行が速くリンパ節や骨などへ転移するタイプもあります。

前立腺がんは男性のがん罹患数の1位を占めており、近年増加傾向にあります。2023年には、102,094例(人)が全国で前立腺がんと診断されています。50~70代の中高年男性に多くみられる傾向があります。高齢化やPSA検査の普及などを背景として、日本でも多くの男性が前立腺がんと診断されています。

出典:国立がん研究センター「前立腺がん 患者数(がん統計)」
https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/patients.html

前立腺がんの初期症状は?

前立腺がんについて知っておいていただきたい重要な特徴のひとつが、「初期には症状が出ないことが多い」という点です。前立腺がんは尿道から比較的離れた場所に発生することが多いため、小さいうちは排尿に影響しないことがあります。そのため、「症状がないので前立腺がんではない」とは言い切れません。健康診断や人間ドックなどでPSA高値を指摘され、それをきっかけに詳しい検査を受けて前立腺がんが見つかることもあります。

一方、がんが大きくなってくると、次のような症状がみられることがあります。

  • 排尿障害:尿が出にくい、勢いが弱い、トイレが近い、残尿感がある、など
  • 尿や精液に血が混じる
  • 排尿時の痛み
  • 尿が出なくなる(尿閉) など

さらに進行して骨やリンパ節などへ転移すると、

  • 腰や背中などの痛み
  • 足のしびれ
  • 足や陰嚢、下腹部のむくみ などが見られることもあります。

ただし、これらの症状があるからといって前立腺がんとは限りません。前立腺肥大症をはじめ、さまざまな泌尿器科疾患でも同様の症状が起こります。→前立腺肥大症についてはこちら:最近おしっこ近いなぁってありますか?-前立腺肥大症について

前立腺がんと前立腺肥大症の違い

前立腺がんと混同されやすい疾患に「前立腺肥大症」があります。
前立腺肥大症も中高年以降の男性に多く、

  • 尿が出にくい
  • 尿の勢いが弱い
  • トイレの回数が多い(頻尿)
  • 排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)

などの症状が見られます。しかし前立腺肥大症と前立腺がんは別の疾患です。
前立腺肥大症は主に尿道に近い部分が大きくなるため、比較的早い段階から排尿症状が現れやすいという特徴があります。一方、先にもお話しましたが、前立腺がんは尿道から離れた場所に発生することが多いので、初期には症状が出ないことがあります。また前立腺肥大症と前立腺がんが同時に存在する場合もあります。

排尿症状だけから前立腺肥大症なのか前立腺がんなのかを判断することは難しいため、必要に応じた検査で診断を行うことが重要です。

このような方は泌尿器科へご相談ください

次のような場合には一度泌尿器科で相談することをおすすめします。

  • 健康診断や人間ドックでPSA高値を指摘された
  • PSAの再検査や精密検査を勧められた
  • 排尿で気になることがある(尿が出にくい、勢いが弱い、トイレの回数が増えたなど)
  • 排尿後も尿が残っている感じがする
  • 血尿がでた
  • 父親や兄弟などに前立腺がんに罹った方がいる
  • 前立腺がんが心配で検査について相談したい

特にPSA値の異常を指摘された場合は、症状がなくてもそのままにせず、泌尿器科を受診されることをお勧めします。

前立腺がんの原因・リスク

前立腺がんが発生する原因は完全には解明されていませんが、発症リスクに関する要因として、特に「年齢」や「家族歴」などがあげられています。

年齢

決定的な原因は明らかになっていませんが、加齢に伴い発症する可能性が高くなることがわかっています。前立腺の成長に関わる男性ホルモンのバランスの崩れが、がんの発症と進行に関係すると考えられています。中高年以降の男性では、症状の有無だけでなく、年齢やPSA値なども考慮して前立腺の状態を確認することが大切です。

家族歴

家族内に前立腺がんを発症された人がいる場合、前立腺がんにかかるリスクは2倍~5倍程度に及ぶと報告されています。ご家族に前立腺がんの方がいる場合には、受診時にそのことも医師へお伝えください。

その他の要因

食生活を含む生活習慣など、さまざまな要因と前立腺がんとの関連について研究されています。脂肪の多い食事や緑黄色野菜の摂取不足といった食生活が、前立腺がん罹患率上昇の背景にあるのではないかと言われています。特定の食品だけを過度に避けたり、摂取したりするのではなく、バランスのよい食生活、規則正しい生活習慣を心掛けることが大切と言えるでしょう。

前立腺がんに係る診断・検査

前立腺がんを診断する手順は右図のとおり、各種検査を行った後に針生検を行い、前立腺がんが確定した場合には病期(ステージ)の確定に進みます。

PSA(血液)検査

PSA(Prostate Specific Antigen)とは、前立腺で特異的に作られるたんぱく質の一種で、前立腺特異抗原とも呼ばれます。ほとんどは前立腺から精液中に分泌されますが、一部が血液中に取り込まれるため、健康な人の血液中にも存在します。血液検査によってPSA値を測定することができます。

前立腺がんや前立腺肥大、炎症があると、血液中にPSAが大量に漏れ出します。このためPSA値が高くなった場合は、前立腺に前立腺がんや前立腺肥大、前立腺炎など、何らかの病気や傷があると考えられ、より詳しい検査を受ける必要が生じます。PSA値の正常値は年齢によって異なり、高齢の方ほど高くなる傾向があります。

~基準値~ ~4.0ng/ml
(年齢階層別基準値)

64歳以下~3.0ng/ml
65~69 歳~3.5ng/ml
70歳以上~4.0ng/ml

このような理由からPSA検査は前立腺がんを早期発見するのに有用な血液検査となるとされています。PSA値が高いほど前立腺がんの疑いが高くなりますが、先に述べたように年齢や炎症でも数値が高くなることがあるため、たとえ基準値を超えていても、PSA値の推移や前立腺の大きさ、画像検査などを総合して症状を確認してから、さらに検査が必要かどうかを判断します。

直腸診(DRE)

前立腺は直腸に接しているため、肛門から指を入れることで前立腺の形状を知ることができます。
触診を行って、前立腺の大きさ、しこりの有無、表面の弾力性を確認します。前立腺が弾性のある硬さであれば前立腺肥大症、石のように硬い場合はがんの疑いありと判断します。

超音波(エコー)検査

超音波を用い、前立腺の大きさの測定・形状などを確認します。またエコーの反応でがん疑いの箇所を確認することもできます。

MRI検査

さらに詳しく状態を検査する場合にはMRI検査を行います。MRIでは前立腺内部を詳しく観察し、前立腺がんが疑われる病変がないかを確認します。当院ではMRI検査が必要と判断した場合には、近隣の医療機関で速やかに検査を受けていただけるよう手配致します。撮影した画像の結果は当院でご説明致します。

前立腺針生検

上記の各検査の結果から、がんが疑われた場合には前立腺針生検を行います。前立腺から針を使って少量の組織を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無やがんの性質などを調べる検査です。
当院では日帰りで検査を行っております、詳しい内容はこちらその他の日帰り手術・検査

~前立腺針生検(図)~

病期(ステージ)診断

前立腺針生検でがんと診断された場合は、CT・骨シンチグラフィなどの画像診断(当院では近隣医療機関で撮影した結果を当院でご説明します。)を行い、前立腺がんの広がりや転移の有無を調べ、病期(ステージ)を確定します。

前立腺がんの病期は

がんの大きさや位置(T分類)
前立腺近くのリンパ節への転移の有無(N分類)
離れたリンパ節や臓器、骨への遠隔転移の有無(M分類)      のTMN分類を用いて表すのが一般的です。


また、病期の他に、悪性度を示すグリソン・スコア(Gleason score)という指標もあります。グリソン・スコアでは、前立腺生検で得られたがん細胞のうち、表面積の広いほうからふたつの組織像について5段階評価し、その点数を合計したものをいいます。
グリソン・スコアが
6以下のがんは性質のおとなしいがん、
7は中くらいの悪性度、
8~10は悪性度の高いがん     とされます。

前立腺がんの治療

治療は病期診断の結果と悪性度リスク分類、および標準治療ガイドラインを中心に、患者さまの希望や生活環境、年齢などを含めた身体状態など総合的に考慮して話し合い決定していきます。

監視療法  治療は行わず経過観察のみを行う
手術    開腹術/腹腔鏡下手
      ロボット支援下手術 ←近年はほぼ主流となっています
放射線治療 外照射/組織内照射/陽子線/重粒子線
薬物治療  ホルモン療法/化学療法/免疫療法/分子標的療法など

病状や、身体の状態に応じて治療方法は都度検討されていきます。

PSA高値を指摘されたら、まずは泌尿器科での受診を

前立腺がんに限ったことではありませんが、健診などで要再精査になったり、普段の生活でいつもと違うと感じることがあればかかりつけ医への相談をご検討ください。

特に前立腺がんでは、初期には自覚症状がほとんどないことがあります。そのため、「症状がないから大丈夫」とは限りません。また「PSA値が高いからがんかも」とも言えません。早期にがんを見つけることができれば、患者さまご自身の負担も少なくて済むことになります。

当院では診察やPSA検査などから必要な検査を判断し、MRI検査が必要な場合は近隣医療機関と連携して検査を手配しています。また、その結果前立腺がんを疑われた場合には、前立腺針生検を日帰りで行っています。初診時から検査、治療まで丁寧に説明し、患者さまの意思決定で全力サポートします。
また、手術・放射線治療・化学療法など専門的な治療が必要になった場合には、基幹病院と連携して安心して治療を受けていただけるようにします。

「PSA値が高いと言われたけれど、どうすればよいかわからない」
「前立腺がんが心配」
という段階でも構いません。当院までお気軽にご相談ください。